村上隆『芸術起業論』レビュー(前編):徹底した市場研究からの価値

ども!ぱるみじゃーのです。


先週、村上隆の『芸術起業論』について

友人で会社経営をしてる向山雄治さんきっかけで

おもしろそうだなと思うようになった

という記事を書かせていただきました。


向山さんは株式会社を2社経営されていて、

セレクトショップ、飲食店、レンタルオフィスなど、

多岐にわたる事業展開をしている方です。


流行り病で世間が激動する中でも、

バリバリ右肩上がりで稼いでいる、

私にとっては身近で尊敬する経営者です。


資本主義の中で芸術が提供する価値とは?疑問を解く鍵となる1冊の本



それで、さっそく

『芸術起業論』を読みました〜!!!😆✨


前回の記事では、

こんな疑問があると書きました。



日本では、芸術では食べていけないのが通説。

しかし、資本主義の世界では価値提供できれば、お金になるはず。だけどそうではない。

では、芸術が提供する価値は何か。


この疑問に初っ端から答えをくれる、

とても読みやすい本でした!



村上隆という一人の人間が、

芸術の業界に対する挑戦と葛藤を

なんとか表現しようとしている感じで、

そのリアルな熱量にとても好感がありました。



・芸術を生業にしたい人

・起業したい人、これから立ち上げていく人

・芸術ってよくわからないな〜

(でも理解したい気持ちはある)という人


におすすめです。

文体は読みやすいので、

ぱらぱらっと読んでみるといいと思います📚✨




前編後編に分けて、

レビューしていきたいと思います♪


まずは概要!

『芸術起業論』では、

日本において芸術で食べていけない理由が、

冒頭から書かれています。


それは、芸術の本場である欧米と日本では

基本姿勢や評価基準が全く違うからです。


欧米での芸術の基本姿勢は、

知的な「しかけ」や「ゲーム」を

楽しむことであり、


評価基準というのは

「概念の創造」をしているかどうかです。



概念の創造というのはつまり、

欧米美術史の文脈を踏まえた

新しい解釈を提案することなのです。




例えば、20世紀の巨匠とされる

マルセル・デュシャンの有名な作品には、

《泉》という作品があります。


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マルセル・デュシャン《泉》

画像引用元

https://ja.m.wikipedia.org/wiki/泉_(デュシャン)



この作品は、男性便器にサインをして

「作品」として提出したため、

当時の問題作とされました。


既製品にサインをして「作品」にすることで、

芸術家の手仕事によって制作されたものが

「作品」であるという

それまでの固定概念を覆したのです。



デュシャンの提案したこの概念を

「レディメイド(Ready-made)」と呼び、

欧米の美術史に一石を投じました。


ちなみに、デュシャン以外にも、

様々な芸術家が「概念の創造」をした

20世紀の芸術。


本で学ぶにはまだ難しい・・・という方は、

中田敦彦さんのYoutube大学が

入門編としていいと思います。


めちゃくちゃやさしく&楽しく学べますよ。

ご参考まで♪

【アートの見方①】アートの固定観念を壊した6人の芸術家

【アートの見方②】賛否両論のイノベーションを巻き起こした天才芸術家






脱線したので本題へ。


「概念の創造」が、

欧米での芸術の評価基準と言いました。


つまりは、欧米の美術史を

徹底的に勉強、分析し、その積み重ねの中から、

新しい解釈を提案することができれば

「アーティスト」として認められる可能性があるのです。


このルールを外した「自由」は

全く評価対象にはなりません。




では日本はどうなのでしょうか。


日本の美術業界では、

このような評価基準は全くありません


その大きな要因として

村上氏は3つの背景を挙げています。



一つ目は、日本の美術教育の問題。


日本の美術大学では

芸術で生計をたてる方法を教えません


それは業界構造が大きく影響しています。


日本で芸術や知識をつかさどる人間が、

機能できる舞台が学校にしかありません


そのため、勤め人の美術大学教授が、

生活の心配のない学生にモノを教え続ける

という構造がずっと繰り返されています。


そんなモラトリアムの構造から、

芸術を生業としてサバイバルしていく人間は

そもそも生まれないということなのです。



二つ目は、日本の美術の評価基準が、

19世紀の開国時でとまっていることです。


当時の欧米は、

アーティストがパトロンから決別して、

自発性を重視するという潮流でした。


それが未だに続いていると、

日本では思われている。


要は、お金に関係なく、

自分の自由気ままに描くことが作品である

と誤認しているというのです。


村上氏のように、

企業とコラボして協業していくことは、

現代ではしごく当たり前のことですが、

日本で芸術とお金が絡むとやっかまれるのは、

日本が19世紀の価値観でとどまっていることにあります。



そして三つ目は、戦後民主主義の世界では

「美術はすべての人の理解できるものであるべき」

と認定されていることです

(これは日本だけに限りません)。


ですが、芸術は実のところ、

超がつく大金持ちの

「コストがかかる遊び」であり、

万人に理解されうるものではないのです。



こういった歴史的・文化的背景を踏まえて、

村上氏が欧米の美術業界で一旗挙げるために、

研究に研究を重ね、もがきにもがいて出した答えが、

日本のサブカルチャーを欧米のハイカルチャーに組み込む「スーパーフラット※」という新しい概念でした。


これによって、村上氏は

欧米の美術業界で高い評価を得られたのです。



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村上隆《727》

画像引用元

https://www.artpedia.asia/takashi-murakami/


※スーパーフラットの説明は、

以前村上氏について紹介した記事で

書いたのでよかったらご参考までに。

この際、村上隆に明るくなろう




まとめ

ここまでの内容をまとめると…!

欧米と日本では

芸術の評価基準は全く別物です


芸術の本流である欧米で、

評価を得たいのであれば、

新しい「概念の創造」が必須になります


日本ではこうした評価基準がなく、

芸術を生業にする人が育たない、

生きていけない土壌があります。


これらを踏まえて、

村上氏は美術業界の分析を徹底的に行って、

「スーパーフラット」という

新しい概念を打ち出すことで、

欧米の美術業界から高い評価を得られたのです




感想

前提を理解してはじめて、

本質が見えてくると思いました!


村上氏は、はなから一般人、

はたまた日本人なんて相手にしていない。


・主たるマーケットであるお金持ちに

どう楽しんでもらうかを徹底的に研究して、

実践していくこと


・それが美術業界で生きていく上で最も大事、

かつ必要な価値提供だということ


これらをとことん実践していると感じました!


世界のトップに評価されて箔を付けてから、

一般社会に広めていくという手段を取りますが、

そこに彼のビジネスマンとしての

徹底した分析をもとにした戦略が見えて、

なるほど!!とうなるばかりです…!




さて後編では、

村上氏が具体的にどんなふうに世界で

戦っていったのかを書いていこうと思います。


アンディ・ウォーホルの制作のスタンスや、

なぜゴッホが評価されたかなど、

かつての巨匠がどう評価されたかなどを踏まえて、

村上氏も色々策を打ち出していきます。


それは芸術家というより、

ほんとに一流ビジネスマン!



『芸術起業論』を読みたくなった

きっかけをくれた友人の向山さんが

ふだん大事にしている考え方

(個人より組織で勝負すること等)や


発想(やりたいことをやるには

経済的な自立が必須等)に


共通する部分があって、

とても興味深いですよ・・!


後半もお楽しみに!

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